November 2015

今なぜ、ファミリービジネスが注目されるのか

経済成長の停滞と大企業の雇用縮小 今現在の日本を概観してみますと、団塊世代の経営者は、高度経済成長を背景に、事業規模拡大をしてきたので、停滞期のビジネスには慣れていない。 団塊ジュニアは、大学を出て就職したときには、高度成長もバブル経済も終わっていて、停滞の中でもがいてきている。 大企業はITの普及もあって、ホワイトカラー特に中間管理職は不要になって、創造性の高い即戦力人材のみを採用するようになっている。 物つくり系の企業はアジアに生産拠点を移して、日本国内の工場を閉めなければやっていけなくなってきた。 主要な大都市以外の地方では、高齢化が進んで、商店街など後継者がいないままにシャッター通りになっていっている。 地域経済の担い手 こういう時代にあって、将来の雇用の受け皿として、家業を見直す必要が出てきているからではないでしょうか。 ご存じの通り、地域に根差した産業は、ファミリービジネスの形で支えられています。 もちろん、親の世代がやっていた、そのままの形で事業を継いでも、顧客がついてきてくれない事業は多いのかもしれません。 それでも、時代のニーズに合わせつつ、顧客の満足を得る方策を苦心して、事業を発展させている後継ぎもいます。 就職活動で就職先企業を見つけられず、フリーターになって定職を持たない若者が増える中で、雇用の受け皿となる地域密着の企業が自信を持ってビジネスを展開していけないものでしょうか。 就職活動では一部のブランド企業に応募が殺到しています。 大企業にだけ、ビジネスのチャンスがある訳ではないにもかかわらず。 もちろん恵まれた環境で仕事ができ、報酬もそれなりに良いからそちらに目が行ってしまうのでしょうが。 一方で中小企業にも多くのチャンスがり、働き甲斐があるはずです。 ファミリービジネスのオーナー経営者が、自分たちの強みと脆さを自覚して、積極的に経営にチャレンジして行くより、日本の経済の活路はないのではないかと私は考えています。 ファミリービジネスと起業家精神 かつてのベンチャービジネスのブームも下火になってしまっていますが、老舗の会社ほど、時代のニーズをくみ取って、自己変革を怠らないものであります。 今の流行りの分野で起業にチャレンジするのもよいですが、老舗企業が持っている本質的な強みを、未来に向かって創造的に組み立てなおす作業もエキサイティングで取り組み甲斐があるはずです。 ファミリービジネスは、ベンチャービジネスと同じ創造性のある起業家精神を持っていなければ、永続的に発展できないものです。 次の世代の事業承継者には、この点を良く理解してもらって、残すべきものと変えるべきものを峻別して経営に取り組んでいってもらいたいものです。 我々の協会の役割は、それをサポートしていくことだと考えています。協会の発足にあたり、会員の皆様からのご支援をお願い申し上げます。

ファミリービジネスとベンチャービジネス

私はこれまで10年以上にわたって東京のNPOの理事として活動する中で、ベンチャー企業経営者のビジネスプラン作りをお手伝いしてきました。 そのNPOはMIT-EFJというビジネスプランコンテストを主催している団体です。 そこでの経験を通じて、 「会社を永続させることの難しさ」と 「ベンチャー企業を生み出す難しさ」は 似ているように感じています。 ファミリービジネスの事業承継の支援と、ベンチャー育成には共通点が多くあると考えています。 むしろ、ファミリービジネスが時代に合わせて自分達の事業を変革するということは、新しい事業をゼロから立ち上げることよりも多くの困難を伴うものだと思います。 ひとつのビジネスが成長して衰退していくライフサイクルは、ひとつの山のような形をしています。 第一世代→第二世代→第三世代→第四世代と山が並んで、その稜線をつないでいくことで、ビジネスは維持されていきます。 発展している会社は、この山がだんだん大きくなっていくということでしょう。 衰退していくのは、この山をつなぐ作業に失敗したからではないでしょうか。 日本は老舗大国です。 つまり、日本人は会社を永続させる能力があるのですから、ベンチャービジネスを生みだす能力も持っているはずです。 自分達のすぐれた能力に気付いておらず、また、新規事業立ち上げにおいての支援の仕方が上手でないのかもしれません。 日本がこれからも経済的に発展していくためには、 ファミリービジネスに対する理解を深めた上で、事業承継を支援することと、 新しいベンチャービジネスを生み出す力を発揮すること、 の2つが車の両輪となって機能する必要があると私は考えています。 ファミリービジネスアドバイザー認定講座の中でも、事業承継と新規事業育成について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。